愚葉土

腐った葉っぱは肥料になるけど、愚かな言葉は何にもならぬ

頓挫

読むのを挫折した本の感想を書きましょう。

 

ひとのブログを読みたいという話は以前書いた通りなのですが、このご時世に好みのブログを発見するのはなかなか難しいです。

文章にまとめられた他人の生活を読みたい。できれば仄暗いのがいい。本当はリアルタイムで更新されるものがよいけど、何ならそこは妥協しましょう。

ということでブログ漁りの代替案を見つけました。文豪の作品です。それも私小説。これはまあ日記みたいなものでしょう。

そこで、島尾敏雄の『死の棘』を読み始めました。昨年これの評論本が賞をとって話題になりましたね。こう書くとさぞ したり顔で語ってる感じが出ますが、読むの挫折してます。

 

『死の棘』は浮気がバレた夫と、それがきっかけで精神を病んでしまった妻のお話ですね。わたしは奥さんの心理に興味があったのですが、旦那が書いてるので、彼から見た奥方の描写がメインです。

とかくこの旦那がかわいそうで笑っちゃいます。ごめんね。でもわろてしまう。完全に自分に非があるのをわかっているので、神経の逆立った妻のエンドレス糾弾に対して手も足も出せず縮こまるしかありません。ひたすら彼がしんどいのを読む小説です。

何がヒドかったって、責められるのが辛いあまり「自分も気がおかしくなったフリをして妻をビビらせることで回避する」という術を旦那が獲得するところです。最低〜。いい加減にしろという感じですね。

ただ、この主人公の振る舞いがめちゃくちゃ身に覚えあるんですよね。つらいことからドロップアウトしたくて、狂ったアピールをする。けどそれがフリであることを分かってる自分もいて、絶えず情けなさに苛まれてしまう。それもつらいから、いやこれは狂ったフリではない、本当に自分はおかしくなったんだと証明するために、自殺一歩手前のところをウロウロし始める。それでもやっぱり一思いに跳んでしまえないのが、ただもう痛々しい。

 

往時の自分を客観的に見た思いで、とてもしんどくなったので読むのをやめてしまったのでした。次はエンタメ全振りの明るい本が読みたいですね。