愚葉土

腐った葉っぱは肥料になるけど、愚かな言葉は何にもならぬ

『#コンパス』を語りたい

どうも、オタクのマリオネットです。踊らされているよ!!

久々に爆裂長文を書きます。普段このブログを読んでくださっている方にはちょっと興味を引かない話かもしれません。なぜならソシャゲと美少女の話をするから。あとデブとロボ。動画をやたら貼りますが、サムネを参考画像にしたいだけなので全部は観なくて大丈夫です。重かったらごめんね。

 

少し前まで『#コンパス』というゲームを遊んでいました。今は対人戦の厳しさに追いつけず遠のいてしまったのですが、あの世界観とキャラクターにはいまだに唸らされます。コンパスは3Dアクションによる陣取り合戦です。フィールドにあるポータルを3つ以上維持したら勝ちで、攻撃役や防衛役のキャラクターで連携して戦うのです。よくあるデッキ構築カードゲームのように100何人とかいうキャラがいるわけではない……のですが、それでも結構な数の操作キャラがいます。

ところでソシャゲを観ていて残念な気持ちになったことはありませんか。どれだけストーリーが仰々しく語られていても、他社のマンガとかアニメとかとコラボすることで世界観がしっちゃかめっちゃかになるあの現象。ビジネスとして仕方ないことではあるのですが、少し寂しい光景でもあります。

(かたくなにコラボしない作品などもあり尊敬する……が、あれは元のコンテンツに体力があってこそだから難しいね。)

 

ところがコンパスはこの問題において軽やかでした。実は本作におけるキャラクターは皆、さまざまなフィクションの世界線から呼び出された登場人物なのです。SF世界の戦士もいれば学園モノのヒロインもいる。ゴシックホラーのキャラクターも、アステカの戦士もいる。つまり「全部知らん作品のスマブラ」状態なのです。これなら他社のキャラが紛れていても違和感がない。

そしてこの設定はコラボしやすいという実用面以上に、単純にそのお祭り騒ぎ感が楽しい! HALOみたいなパワードスーツのオッサンと魔法少女が肩を並べてるんすよ。一国を滅ぼした軍人が女子高生にノックアウトされちゃうんですよ。愉快すぎる!

もしかしたらわたしが知らないだけで「世界観ごった煮」というアイデア自体はそれほど新しくもないのかもしれませんね。しかしコンパスは、煮込まれてるキャラクター同士の味が消えないくらいアクが強いという点で際立っていると思います。

いずれのキャラも王道ではなく、どこか尖っている……有り体にいってしまえば、みんな何かしら「ニッチな性癖」を刺そうという魂胆が透けてみえるんですよ。なんか、こう……老執事とか……。おっさん率も高いし。人外いるし。あとわたしが離れてから登場した男性キャラは「に、2010年代に流行った一連のストーリーを伴うVOCALOID曲に当時ハマっていたティーンに刺さるやつ〜〜〜〜!!!!!」と思いました。察してください。(https://youtu.be/iROoYkPDmy4)

 

ここからがやっと本題。わたしが以前から「美しい……」と思っていたキャラクターに「リリカ」という女の子がいます。

モチーフの世界観は、日曜朝のアニメ。「魔法少女リリカ☆ルルカ」というコンビで、相棒のルルカと一緒にみんなのユメを守る可憐な少女です。頑張り屋でいつも明るく振る舞う女の子。混沌としたコンパス界にあって光り輝く存在……のはずでした。ところが彼女のテーマ曲は、こんな感じ。

不安を誘うイントロ。途切れ途切れに呟くような歌詞。虚な表情のリリカ。タイトルにあるように彼女の抱える劣等感を歌い上げた曲となっています。実はリリカには問題がありました。「リリカ☆ルルカ」のコンビで活動しているのに、相方ルルカの方が人気を上回っていたのだ!

もちろんそれは、彼女が暮らすアニメの外の世界の話。あくまで希望あふれる魔法少女である彼女は、そんな影を一切見せません。ゲーム内での台詞も明るく前向きなものばかり。唯一テーマ曲にだけ、リリカが抱えるダークな物語が織り込まれているのです。この「めちゃくちゃ大事な設定を音楽だけに詰め込む」という見せ方! まずそこに痺れる!

これだけであれば、リリカが病的なばかりのキャラクターに見えます。実際それだけでも充分濃いキャラクターなのですが、彼女にまつわるギミックはそれだけではない。

コンパスに登場する別のキャラクターに「マルコス'55」という少年がいます。容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ神経抜群。まさに完璧超人。しかし彼にも問題がありました。ニートなのである!!!!!!!

そんな環境も彼が望んだものではありませんでした。生まれながらに何でもできてしまうゆえに、何かに必死になるということを知らない。全力で願い求めることを知らない。ハイスペックな能力ゆえに、マルコスの人生は空虚で無気力な生活へと追いやられていきました。

そんな人生で彼が見つけたのがアニメ「魔法少女リリカ☆ルルカ」だったのです。そこに登場するリリカにマルコスは強く惹きつけられました。足りないところだらけの不完全なリリカが、人を助けようと愛を振りまく姿に魅了されたのです。万能の彼とはまったく真逆の存在でした。

何にもできない劣等生が、何でもできる完璧人間を救う。それは普通ならあり得ない物語でした。いくら恋い焦がれてもマルコスはテレビの外の人間だから。しかし、その不可能を可能にしてしまう超システムが存在したのです。それがコンパスの世界。それぞれの世界から呼び出された彼女らは奇跡の邂逅を果たします。

出会うはずのなかったふたりが出会い、救われるはずのなかった魂が救われる。これがリリカとマルコスのストーリーです。ゲームで具体的な描写が語られるわけではありません。ただ短いキャラ設定がキャプションにあるだけ。

それでも!! その短い設定とゲームシステムと音楽諸々でこんなに完璧なドラマが構築されている!! 見せ方が……上手すぎる……。わたしはそんなに美男美女のカップリングに興味がないんですが、リリカとマルコスは世界観を絡めて本当に完璧にハマってる設定だと思います。ちなみにふたりがフィールドにいるとバフがかかるぞ!

 

かくしてベストマッチのふたり組としてコンパスきっての活躍を見せていたリリカとマルコス。しかし今年、そんな彼女らの関係を大きく揺るがす事件が起きました。

2020年、魔法少女ルルカがプレイヤーとして実装。バックグラウンドでのみ存在が語られ、視聴者の人気をかっさらっていた「ルルカ」がコンパス の世界に現れたのです。

コンパス の世界でようやく自身が輝ける場所を見つけることができたリリカ。そんな彼女の安息が、相方にしてライバルであるルルカの登場でふたたび乱されるのではないか。そのような暗雲を予感させながらルルカがプレイアブルとなりました。

このときわたしはすでにコンパスから離れていたので、遠い噂だけ聞き及んでいて実態を知りませんでした。YouTubeが突然ルルカのテーマ曲をサジェストしてきたのはほんの数日前のことです。懐かしさと好奇心を胸に、軽い気持ちで再生ボタンを押しました。

リリカのテーマと同様、魔術的な不安定さを感じさせるイントロ。しかしすぐにアップテンポの明るい曲調に切り替わり、矢継ぎ早に歌詞が歌われていきます。迷いながら言葉を呟くようなリリカの歌と違い、優等生であるルルカの自信がにじみ出ているようです。

抑揚の控えめなAパート、盛り上がりを見せつつマイナー調のメロディで感情を抑えたBパートときて、溜め込んだエネルギーがほとばしるサビ(1:04)へ。ここで殴られたような衝撃を受けました。

「リリカ リリカ」しか言ってねえ!!!

光が差し込むように明るくなるサビですが、何とここの歌詞でずっとリリカの名前を呼んでいるのです。だってこれ、「ルルカの」歌なんすよ。キャラソンで別のキャラの名前連呼することある?

テーマ曲でリリカの名を繰り返し唱えるということは、ルルカという人物の主題においてリリカが欠かせない存在であるということ。実際2:17あたりから、その予感の答え合わせが始まります。わたしはこのパートの「ごく一部のアニメーション」にビビり散らしました。ドキドキ文芸部じゃないんだからさ。

優等生に対する劣等生が、別の完璧超人を救うことで満たされた。しかし実はその優等生こそが、劣等生を愛して止まない人物だったのだ。これからいったい、3人の関係はどうなっちゃうの〜〜〜!?

 

いやはや、興奮しました。思わず3000字語っちゃうくらい衝撃を受けた。とにかく演出が上手い!! 情報の小出し具合、そして意外性のもってき方がエンタメすぎる。存分に踊らされてしまいました。コンパスでは設定以上に何か物語が進展することはそんなにないのですが、今後の展開を期待せずにはいられません。

 

ということで本題はここまで。あと蛇足ながら雑感を語らせてください。せっかくの機会だし。

ここまで美少女とイケメンの話をしてきましたが、いま一度「コンパスのキャラのアクが強い」と言った件を思い出していただきたいのです。現在、最新のプレイアブルキャラとして追加されているのがこちら。

デブだ!!!!!! いいの!?!?!?

この媚びなさ、素晴らしい。一見誰向けなのかわからない(でもきっとこの世の誰かに刺さる)! モーションがモチモチしていて可愛いですね。

ピエールの最高なところは「肥満体なのに自分を男前だと思い込んでいる」という見下げた描かれ方ではないところです。彼は自らの体型に自覚的で、その上で「丸さこそが完全性」と言い放つのです。か、カッコいいいいい!!! この世のキャラ全員そうであってくれ〜〜〜〜〜!!!!!

cosMoさんが手がけたテーマ曲「欲望我慢スル事ナカレ」にも感慨深いものを覚えました。わたしは中学生の時分に同氏の曲にハマっていて、空想庭園シリーズなど「拗れたオタクの水分がなくなるまで煮詰めたもの」みたいな歌を飽かずに聴いていたんですね。

その時代を経たからこそ、翻ってピエールの歌詞の真っ直ぐさに心打たれます。「美味しいもの食べるみたいに、自分の中の願望に素直に生きよう」! なんと伸びやかなことか。あのころのオタクも今や25歳になりました。

 

もういっこ。コンパスについて語るとあらば、Voidollから逃れることはできないでしょう。数々の異世界ヒーローと違い、Voidollというキャラクターだけは特殊です。彼女(便宜上)は、他の登場人物たちを呼び出すコンパスのシステムそのものを管理するロボットなのです。

この……なんというか……アレですね。ある一定の層までは刺さるけど、ラインを超えたコアな層からは逆に刺されそうなデリケートさがありますね。ただ言わせてほしい。わたしはVoidollを非常に好ましく思っています。

というのは「日本的萌えキャラ要素を最大限取り入れつつ、ギリギリAIらしさを失わないラインに踏みとどまっている」という意味です。とにかく運営から「絶対にデレさせないぞ」という強い意志を感じるんですよね。上記のオリジナルアニメについても、うまく物語としてピンチと復活を描きつつ、Voidoll自身の心情を描くことは巧みに避けています。

あと絶対にデレないと言いましたが、バトル中に強化アイテムを使ったときのボイス「戦況優位。行キマショウ(普段と変わらない抑揚のないカタコトながら気のせいか声色に僅かに高揚感が感じられるといっても過言ではない)」が、ロボキャラが見せる態度でもっとも理想的なデレだと個人的に思います。ボイちゃんは安易な心なんかに目覚めないぞ。

そして以下、巨大なヘッドキャノンなんですが。Voidollのテーマ曲「ダンスロボットダンス」はコンパス全体のメインテーマともなっているキャッチーな歌です。ただしリリカなどの例と違い、そのMVにVoidoll自身は出演しません。歌詞も「上! 下! 左右左!!!(英語)」といったナンセンスな言葉が並び、なんとなく恋心を歌っていること以外はつかめない曲となっています。

ただでさえ情報量の少ないコンパスで、世界観の根底に関わるため増して謎の多いVoidoll。そもそもあれだけドライさを押し出したキャラクターでありながら、なぜラブソングがテーマ曲なのでしょうか?

“Void”ollという名のとおり、彼女の二つ名は「虚無の管理人」といいます。kawaiiロボであるボイちゃんには似つかわしくないような気がしますね。これはわたしの趣味ですが、Voidollはロボットとしてのボディを手に入れる前、身体をもたないシステムそのものだったのではないかと思います。

虚に広がる空間に過ぎなかったVoidollが、ボディを手に入れることではじめて「上下左右」の概念を獲得した。「呼吸や温度」を知覚し、「胸が高鳴っていく」感覚さえ知ることになった。

ボディを得て世界が広がったことに対する喜びの発露が「ダンス」という身体表現であり、「ダンスロボットダンス」における恋心はコンパスの登場人物、ひいては身体を持つすべての存在に対するラブレターなのではないか……というふうに思っています。根拠はないけどね!

 

そういうわけで、かつて遊んでいたソシャゲについて思うところを全部吐き出しました。あと個人的にオススメは「庶民派でゆめかわなデビルミント鬼龍一族の末裔」という四次元世界観な女の子・デルミンです。わたしもデビルミント鬼龍とかいう単語思いつきたいよ。